わたしたちの前身は「組織罰を考える勉強会」です。
勉強会では、組織罰の内容や,あり方について、専門家の方々からお話しをお聞きし、学びを積み重ねてきました。
第1回 2014/3/1 川崎友巳さん(同志社大学教授・刑法)
(勉強会要旨)
両罰規定が多数の法令で採用されている現在、刑法に法人処罰の規定がないのは、「できない」からではなく、「必要性が低い」から
現代社会に対応するためには組織罰が必要である。
伝統的な刑法理論も、理論上は克服できる。そのためには被害者の力が必要。 ☞詳細はこちら
第2回 2014/5/24 安原浩さん(弁護士,元裁判官)
(勉強会要旨)
当事者と関係者が納得できるようにするのが刑事裁判の目的である。
現代の司法には問題が多い。信楽事件、JR福知山、火災事故など判例の対応。
危惧感説の見直し、両罰規定の活用、組織罰の新設を提言。
第3回 2014/7/5 佐藤健宗さん(弁護士,TASK事務局長)
(勉強会要旨)
歩道橋事故、信楽高原鉄道事故などを踏まえて、刑事司法(特に捜査機関)の絶望的な現状について紹介。
事故調査を推し進めることで再発防止、安全確立をすすめるべき。
法人処罰については、事故調査への支障や、現実的担い手がない等の問題がある。
第4回 2014/9/27 大森重美さん・津久井進さん(組織罰を考える勉強会)
(勉強会要旨)
大森によるイギリス訪問調査(遺族,弁護士,学者,安全コンサルタント)の結果を報告した。
遺族の力が大きい。組織罰の効果はある。ただし企業活動が消極化している傾向もある点に注意が必要。
イギリス故殺法は具体的予見可能性説(具体的危険説)を克服するという点で意味がある。
第5回 2014/11/22 地脇美和さん(福島原発告訴団事務局長)
(勉強会要旨)
原発事故の実情がどのようなものであるかレポートがあった。
事故の背景にある官・産・民・学・報のペンタゴンは、共通している。
役員たちは個人的な責任を問うだけでなく、東京電力に対する組織罰も必要である。
第6回 2015/1/24 下村誠治さん(明石歩道橋事故犠牲者の会会長),盛本英靖さん(福知山花火大会「被害者の会」会長),松本邦夫(笹子トンネル天井板崩落事故遺族),大森重美さん・藤崎光子さん(JR福知山線列車事故遺族)
(勉強会要旨)
明石歩道橋事故、JR福知山線事故、笹子トンネル事故、福知山花火事故のそれぞれの実情について報告があった。
それぞれが抱えている問題の相違と共に、遺族として共通する思いや課題があることが浮き彫りになった。
第7回 2015/3/21 古川元晴さん(弁護士,元検事),船山泰範さん(日本大学教授・刑法)
(勉強会要旨)
現在の刑事司法で採用されている具体的予見可能性説(具体的危険説)が市民感覚と大きくずれている。
今こそ危惧感説を再評価すべきであり、「合理的危険説」という呼称で見直していくべきである。
JR事故は当然有罪となるはず。社会運動の展開が必要。
第8回 2015/3/20 山口栄一さん(京都大学大学院教授・物理学・経営学)
(勉強会要旨)
科学的に分析すればJR福知山線列車事故における予見可能性は100%肯定され、確率1でこの事故が発生することは、1996年12月の線路の付け替えの時点で、リザーブ(予約)されてしまった。
現在の司法の論理には欠陥がある。組織のトップが科学的思考を持つことが大事。
ただし、組織罰は実際に機能するかどうか検討が必要。
第9回 2015/8/3 今井猛嘉さん(法政大学大学院法務研究科教授)
(勉強会要旨)
イギリスでは故殺法があまり機能していない。豪州でも同様で、根本的な難しさがある。
刑法は謙抑的で、過失犯に対する責任は控えめにというのが一般的な考え方。
組織罰には、法理論上,困難な点が多く、更に研究が必要である。
第10回 2015/10/28 郷原信郎さん(弁護士,元検事)
(勉強会要旨)
遺族の心情に応える刑事司法のあり方と、組織罰における議論を再検討した。
具体的予見可能性説(具体的危険説)を覆すのは現実的に難しく、危惧感説(合理的危険説)の採用は困難だろう。
そこで、両罰規定を業務上過失致死罪に設けるとともに、立証責任を企業に転嫁する方法を提案する。
第11回 2015/11/28 坂本哲さん・津久井進さん(弁護士,組織罰を考える勉強会)
(勉強会要旨)
これまでの勉強会の成果を振り返って、足跡を確認した。
両罰規定のほか、三罰規定、「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」などを参考に組織罰の具体的イメージを検討した。
法制化に向けた活動にあり方について意見交換をした。
第12回 2015/2/27 川崎友巳さん(同志社大学法学部教授・刑法)
(勉強会要旨)
組織罰の必要性と可能性について、あらためて概観した。
歴史的な経過、両罰規定の意味、理論的な問題点など、多岐にわたった。
法制化を実現するために必要なことは、何よりも被害者たちの声と、社会の後押しであることが指摘された。